ひらめきを見つけよう:ノーベル賞受賞者のクレイグ・メロー博士(Dr. Craig Mello)とのインタビュー

「好奇心旺盛な人に囲まれ、新しいアイデアを生む対話を恐れないことだ。」
— クレイグ・メロー博士

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今日は、特別なインタビューをお届けします。それは、RNA干渉(RNAi)という遺伝子発現を調節するメカニズムを発見し、2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞したクレイグ・メロー博士との対談です。

僕の名前の由来

本題に入る前に、ちょっとした僕の秘密を明かしたいと思います。僕の「クレイグ」というファーストネームは、アメリカでもあまり一般的ではありません。では、なぜ僕が「クレイグ」と名付けられたのか、その理由を皆さんにまずお話したいと思います。

もう、分かった人もいるかもしれません。僕の名前は、メロー博士の名前から来ています。

メロー博士がノーベル賞を受賞したのは、僕とトーマスが生まれた2006年のことです。ちょうどその受賞発表が、僕たちの生まれる直ぐ前にあり、両親―といっても特に父が―メロー博士の遺伝学の大発見に感銘を受けて、僕をクレイグと名付けました。父は、有名な科学者の名前を僕たちに付けたいと考えていたそうです。

では皆さん、僕の兄のトーマスの名前の由来が誰だか分かりますか? 多分、ほとんどの人が正解でしょうね。そうです、トーマス・エジソン博士です!

実は、もともと僕の名前はアルバートになる予定でした。アルバート・アインシュタイン博士とアルバート・シュヴァイツァー博士にちなんでです。でも、父はRNA干渉の研究に感銘を受けた結果、急遽、クレイグに変更した、というわけです。

そういった背景があり、今回のインタビューは、僕にとって特別な意味をもつものでした。

インタビュー前はとても緊張しましたが、いざZoomで話し始めると、1時間はあっという間でした。お忙しい中、僕たちのために時間を割いてくださったメロー博士に、心から感謝しています。

科学と発見の道のり

メロー博士の分子生物学への道のりは、決して一直線ではありませんでした。

子どもの頃は、宇宙や天文学に夢中だったそうです。博士にとっての転機は、高校生の時に、人のインスリン遺伝子のクローニングについて学んだことで、すべての生物が、共通の遺伝コードを持っていることに大きな衝撃を受けた、と博士は話されていました。

メロー博士が、学校の勉強に夢中になり、やりがいを見出したのは、大学院生の時に経験した研究でした。この時の体験が、未知の領域に挑戦し、自らの手で新しいアイデアを探求するという、博士の科学者としての情熱に火をつけました。

家族、好奇心、対話が大切

メロー博士の探究心は、ご両親の影響によるものが大きいそうです。

博士のお父さんは古生物学者、お母さんは芸術家でした。ご両親はメロー博士に 「疑問を持つこと」、「新しいアイデアを試すこと」、そして「創造的に考えること」 をいつも奨励していたそうです。

特に、夕食時に食卓で行われる家族でのディスカッションが、博士の考える力、伝える力に大きく影響したと話されていました。そして、家族と自分の興味ある話題について議論することは、とても大切だと強調されていました。というのも、家族が専門分野に詳しくなくても、複雑なアイデアをシンプルに説明しようとすることで、自分自身の理解が深まり、また相手の質問から新たな発見が生まれることもあるからです。

好奇心旺盛な人に囲まれ、新しいアイデアを生む対話を恐れないこと。」これは、メロー博士の言葉です。

博士はまた、偉大な発見は、適切なタイミングで、適切な質問をすることから生まれる(Great discoveries often come from asking the right questions at the right time. )とも話されていました。

RNA干渉(RNAi)―革新的な発見

メロー博士は、共同研究者であるアンドリュー・ファイア博士(Dr. Andrew Fire)とともに、細胞が特定の遺伝子の発現を抑制する生来のプロセスである、RNA干渉(RNAi)を発見した功績から、2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

メロー博士はこの仕組みを「ゲノムの検索エンジン」と表現しました。細胞は、アルゴノート(Argonaute)と呼ばれる酵素を利用して、短い遺伝物質の断片を手がかりに特定の遺伝子を識別、調節しているのです。

博士の研究対象は、C.エレガンス(線虫)という小さな生物でした。線虫は、人間にも共通する基本的な遺伝メカニズムを保持していました。メロー博士がこのつながりを見抜いたのは偶然ではありません。博士はインタビューで、「適切なタイミングで、適切な質問をすることの重要性」を繰り返し強調していましたが、僕は、他にも、博士のもつ、進化や生命のつながりに対する深い好奇心や洞察が、この発見に大きく貢献したと感じました。そして、博士の子供時代の興味、家族との食卓での対話、そして科学者としての後のブレイクスルーの間には、強いつながりがあると感じました。

メロー博士の発見は、医学を変革しました。現在、RNA干渉をベースにした治療法が、遺伝性疾患やさまざまな病気の治療のために開発されており、以前は治療が不可能と考えられていた病気についても、治療への新たな希望をもたらしています。製薬会社もRNA干渉を利用した新薬の開発に取り組んでいます。RNA干渉は、かつては科学的な関心の対象でしたが、現在は、医療の最前線で画期的な治療法として期待されています。

情熱、粘り強さ、そして科学の道のり

メロー博士は、科学研究では「粘り強さ」が重要と熱く語っていました。科学とは、一瞬で成功するものではなく、トライ&エラーの積み重ねなのです。多くの画期的な発見は、科学者たちが失敗や挫折に直面しても、決して諦めなかったからこそ生まれました。

また、若い研究者へのアドバイスとして、博士は、研究テーマをグラント(研究費)のためだけに決めてはいけないと警告して、本当に心からワクワクするものを追求すべきだと強調していました。

博士は、優れた発見とは、純粋な好奇心と情熱から生まれるのであって、流行を追いかけるだけでは得ることができない、とも強調されていました。自分の研究を心から愛しているとき、科学者は、より深く考え、困難に直面しても諦めずに挑み続けることができるのだと。

ノーベル賞受賞ニュースの瞬間

最後に、ノーベル賞を受賞したときの気持ちを聞いてみると、博士は、

「あまりの驚きに呆然とした。」と振り返っていました。

ノーベル生理学・医学賞の多くが、発見から15~20年がたってから授与されてきたことを見ても、1998年に発表されたRNA干渉の研究が、わずか8年後の2006年に受賞されたことは異例なことでした。

しかし博士は、受賞後も研究を続け、RNA干渉のメカニズムの全貌を解明して研究をさらに発展させ、社会の役に立てようと努力し続けています。その探究心には、本当に驚かされました。

インタビューを終えて感じたこと

メロー博士の歩みは、「好奇心」、「対話」、「忍耐」の力を示すものです。

「科学のブレークスルーは、時に、ゴミ箱の中にある」 と、博士はご自分のラボの大学院生やボスドクに話されるそうです。

博士は、論理的に考えすぎる人は、「誰もやっていない」、というだけでアイデアを追求せず、型破りだとか、常識に反するといった理由をつけて、簡単にアイデアを諦めてしまうところがある、と話していました。そして、そうした考え方こそが、未知の領域を探究する機会を失わせ、問題を新しい視点で捉えることを妨げるのだと。

「冒険しなさい」――それがメロー博士のアドバイスです。

遺伝学でも、生物医学工学でも、どんな分野でも、大胆な問いを投げかけ、意味のある対話を重ね、探究し続けること。それが大事だよ、と博士は私たちに話してくださいました。

両親や先生から僕たちはよく、「ティーンエイジャーは携帯電話でSNSばかり見ていて、すぐに気が散る」と言われます。僕は今まで、それを単にステレオタイプな考えだと思って、聞き流していました。ですが、メロー博士が対談中「意味のある対話の大切さ」を何度も強調するのを聞いて、ようやく、大人たちの心配は、単なるスクリーンタイムのことを言っているのではなく、「じっくり考える時間」や「好奇心のあることに使う時間」が減ってしまうことへの懸念だったことに気づきました。携帯電話ばかり見て、情報の波に流されているばかりだと、たしかに深く物事を考える機会を失ってしまうかもしれません。

僕は、これからは意識して、立ち止まって考える時間を持ちたいたいと思います。そして、家族や友人と面白いテーマについて語り合う時間を大切にしたいです。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

次回のブログでは、コロンビア大学のルドルフ・リーベル博士Dr. Rudolph Leibel)(食欲や代謝を調節するホルモン『レプチン」』の共同発見者)とのインタビューをお届けします。

それでは、次回のブログをお楽しみに。
クレイグ

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