好奇心は宇宙をかける:JAXAの浜崎敬(はまざき・たかし)さんの宇宙への歩み

「人工衛星をつくるにしても、新しい医療技術を設計するにしても、イノベーションの原動力は “好奇心”。」ー 浜崎敬さん
こんにちは!
今回のブログでは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)で長年、国際的な人工衛星プロジェクトを率いてこられた宇宙エンジニアの浜崎敬(はまざき・たかし)さんへのインタビューをお伝えします。
このインタビューもまた、特別な「縁」によって実現しました。浜崎さんは、僕たちの叔父の高校時代の同級生です!今回は、そうしたご縁から実現した貴重なインタビューです。最後までお読みいただけると嬉しいです。
🌍 浜崎敬さんってどんな人?
浜崎さんは、長らく日本の地球観測衛星開発をリードされてきました。
浜崎さんが携われた代表的なプロジェクトとして、
- 🛰 温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)
- 🛰 陸域観測技術衛星(ALOS)
- 🛰 国際宇宙ステーション計画(ISS)
などがあります。これまでに、他にも数百人規模の国際プロジェクトに関わり、NASAやESA(欧州宇宙機関)との連携にも深く携わっていらっしゃいます。
🌍 キャリアの軌跡
浜崎さんが宇宙に憧れたのは、1969年のアポロ11号の月面着陸をテレビ中継で見たことがきっかけだったそうです。その後の浜崎さんのキャリアを簡単に記述すると、
- 東京大学で航空工学を学ぶ
- 修士課程卒業後、宇宙開発事業団(後のJAXA)に入社
- 企画・計画部門からキャリアをスタート
- 地球観測衛星の設計・開発に従事
- GOSATのプロジェクトマネージャーを担当し、温室効果ガスの観測に貢献
- ALOSでは副プロジェクトマネージャーとして活躍し、衛星技術の革新に貢献
- 理事に就任後も国際宇宙ステーション(ISS)計画など重要なプロジェクトを牽引
- JAXAを退職後は、宇宙スタートアップ企業の株式会社ワープスペースに参加し、宇宙関連の新たな挑戦を続ける
こうしてみると、子どもの頃の好奇心が、そのままキャリア形成へつながっていったようなご経歴ですね。
🌍 工学の基礎と応用の面白さ
僕たちの「なぜ航空学を専攻されたのですか?」という質問に対して、浜崎さんは「物理の原理は、工学のどの分野にも共通していますが、分野ごとに応用のされ方に違いがあります。例えば、航空工学を専攻していた中で、飛行機の表面に働く摩擦や揚力などの力を通じて、空気との相互作用を物理の原則を使って具体的に学べたこと、そして、その知識を統合して飛行機という大きなシステムの設計をまとめるプロセスや考え方を学べたことがとても面白かったです」と答えてくださいました。
学びが好奇心に結びつくと、大学の勉強がもっと面白くなる! ということですね。このことはぜひ記憶にとどめておきたいことです。
🌍 エンジニアの進化:技術からマネジメントへ
浜崎さんのキャリアは、エンジニアとして始まりましたが、やがてプロジェクト全体をまとめるマネージャーへと進化していきました。
宇宙プロジェクトはスケールが大きく、多国間での調整が絶えず必要となります。こうした中、マネージャーに求められる主な役割として、
- リスク管理
- 日米欧などとの交渉
- チーム間の橋渡し
を指摘されていました。中でも、「人」と「システム」の両方をつなぐ役割が求められたそうです。
🌍 日本の宇宙開発と世界とのパートナーシップ
ISS(国際宇宙ステーション)で、日本は全体の約1/8(ロシア分を除く)を担当しているそうです。これを伺って、日本の果たしている役割の大きさに驚きました。
また、こうしたプロジェクトでは、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本などが役割を分担し、お金ではなく「責任」のかたちで貢献するのが特徴だそうです。そうしたやり方は、為替変動のリスクを回避するために取られているそうです。それぞれの国が任された「持ち場」を持つことで、為替リスクや予算変動にも左右されにくく、安定した国際協力ができる、と浜崎さんは説明してくださいました。
🌍 民間 vs 公的組織で異なるアプローチ
最近、民間企業のSpaceXの存在がよく知られていますが、こうした民間企業とJAXAのような公的組織では、往々にして託されるミッションが異なることを今回のインタビューで知りました。浜崎さんが挙げられていた両者の主な違いをまとめると、次のようになります。
民間企業 | 官公庁(JAXAなど) |
実績ある技術でリスク最小化 | 未踏領域のリスクへ挑戦 |
コスト重視・収益化重視 | 長期視点での社会貢献 |
短期間で成果を出す | 技術の種をまく |
浜崎さんは、「民間企業とJAXAのような公的組織は補完し合う関係にあって、どちらも必要です。民間ができないところに挑むのが、JAXAのような機関の役割です。」とお話しになっていたのが印象的でした。
🌍 文化を越えるコミュニケーション力
30年以上の国際プロジェクト経験の中で、浜崎さんが特に大切にされてきたことは、
- 言語力(英語と日本語)
- ユーモアやジョークを理解する力、提供する力
- 相手の文化背景を知る姿勢、自分の文化背景を伝える姿勢
だそうです。「信頼関係を築くには、文化を理解しようとする努力、伝えようとする努力が必要です。」とお話しになっていました。
具体的には、アメリカ人の同僚との距離を縮めるため、浜崎さんはジョークの本やスタンダップコメディまで勉強したというエピソードをシェアしてくださいました。僕たちはとても感動しました!
🌟 最後に:すべての出発点は好奇心
「人工衛星をつくるにしても、新しい医療技術を設計するにしても、イノベーションの原点は“好奇心”です。」と浜崎さんはおっしゃいます。
そしてもうひとつ、浜崎さんが私たちに伝えてくれたのは、「エンジニアリングは常に進化している」ということでした。例えば、かつての機械工学は主に時計や精密機器を扱っていましたが、今では、ロボティクスや人工知能といった分野にまで広がっています。そんな変化の多い時代において、若い世代へのアドバイスは、「目を開いて、柔軟でいること」。変化を恐れず、広い視野で未来を見つめることが大切だと教えてくださいました。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
次回は、ハーバード大学医学部のRon Kahn博士や、マウントサイナイ医科大学のBrian Kim博士などのインタビューをお届けする予定です。どうぞお楽しみに!
トーマス& クレイグ