ホン・チェン博士(Dr. Hong Chen)へのインタビュー:バイオメディカルエンジニアリングへの道

次にインタビューしたSTEMの専門家は、ワシントン大学セントルイス校のバイオメディカルエンジニアリングおよび神経外科部門の准教授である、ホン・チェン博士です。チェン博士はすごい発明家です。お話しを伺って、博士のキャリアを形成したバイオメディカルエンジニアリングについて、貴重な洞察を得ることができました。

チェン博士は、中国の大学で学士号と修士号を取得した後、アメリカに移り、ワシントン州シアトルにあるワシントン大学で博士号を取得しました。研究のフォーカスは、がん治療のための超音波を用いた薬物送達プラットフォームの開発です。脳の奥にできた腫瘍を診断するためには、以前は患者の頭蓋骨に穴を開けてバイオプシーをする必要がありました。しかし、博士の開発した技術は、集中超音波を使用して脳の奥にアプローチする方法で、この方法だと、脳のRNA、DNAやタンパク質を一時的に血流に放出することができるので、血液サンプルから、より安全に、患者の負担を減らして診断することができます。

博士の研究はとても成功していて、診断ツールを商業化するバイオテクノロジー会社も設立されています。詳しく知りたい方は、博士の研究室のウェブサイトをチェックしてみてください。

チェン博士との対談を振り返って

博士のお話しは録音しなかったのですが、とても興味深かったので、いくつかの重要なポイントをメモしました。お話しを聞いた場所は、ワシントン大学医学部キャンパスにある出来たての神経学の建物の中にある博士のオフィスでした。この建物は素晴らしく、入った瞬間、白く輝く壁がずっと3階までつづいているのが見えて、天井は高くて圧倒されました。その建物の中を歩くだけで少し賢くなった感じでした。(気のせいかもしれませんが、雰囲気は最高でした。)

バイオメディカルエンジニアリングの強みと課題

チェン博士は、バイオメディカルエンジニアリングは、工学の原則と人体の研究を融合した学問、と説明してくれました。バイオエンジニアリングが植物を含む広範な生物をカバーするのに対して、バイオメディカルエンジニアリングは人間にフォーカスしています。その強みの1つは、メディシンからテクノロジーまで、いろいろな専門分野に触れられることです。

例えば、チェン博士は超音波を使ったnon-invasive(非侵襲的/ひしんしゅうてき)な診断方法の開発をしています。このプロジェクトでは、医師やコンピュータサイエンティストとチームを組んでいます。バイオメディカルエンジニアリングのバックグラウンドを持つ博士は、いろいろな分野の専門家と効果的にコミュニケーションをとって仕事ができると話していました。そして博士は、バイオメディカルエンジニアリングのもつクロスセクショナルな性質が、学生に対して、さまざまな興味を探求し、複雑で横断的な問題に取り組む機会を与えると強調しました。

ただし、トレードオフもあります。バイオメディカルエンジニアは、いわゆる「何でも屋」です。人体に関する知識は医師ほど深くなく、またプログラミングスキルもコンピュータサイエンス専攻の学生に比べると高度なものではないかもしれません。そのため専門家を集めて指揮することはできますが、特定の分野を専攻した人たちと比べると、一般的な知識を持つ「ジェネラリスト」となります。

超音波への旅

僕は、チェン博士が超音波に興味を持ったきっかけに興味があったので、どうしてこの分野に進んだのかを尋ねました。すると博士は、大学時代に超音波への情熱を見つけ、それが博士号研究の中心になったと話してくれました。博士は、早くから自分の天職を見つけられたことに非常に感謝していると言って、でもすべての人がそうではないことも認めていました。彼女の大学院生やポスドクの多くは、まだ自分の具体的な興味を見つけられずにいるとのことです。どの人も、社会に貢献しようという気持ちで努力していますが、「これだ!」という1つのことを見つけるには時間がかかることが多いようです。

オフィスでお話しを聞いたあと、チェン博士は親切に研究室を案内してくれました。雰囲気は医療施設の典型的な現代的ラボという感じでしたが、特に3Dプリンターの存在が印象的でした。動いているプリンターをいくつかあって、学生たちが実験用のモデルを作成するために利用しているということでした。建物が完成したばかりできれいなので、全体のスペースはとてもクリーンでした。研究室は全てフロアの片方にずらっと並んでいて、プリンシパル・インベスティゲーター(PI、研究責任者)のオフィスがその反対側に並んでいて、真ん中を長い廊下が分けているデザインです。フロアの雰囲気は開放的でウェルカムで、PIたちはオープンドアポリシーを持っているかのようでした。ほとんどのオフィスのドアは半開きになっていて、学生(ポスドクかもしれません)がドアをノックして入り、PIとディスカッションしているのが見えました。コミュニケーションとチームワークを促進するためにデザインされた共同作業の環境のようでした。

博士のお話しをきいて研究室を見たあと、僕は非常に感動していました。僕の革新的なメディカルディバイスの開発への情熱はさらに深まり、またこれらの進歩が医療をどのように変革できるかを思い描くようになりました。患者が病気とたたかっている中で、その負担をへらすための技術を作り出すことに、僕は大きな夢を抱いています。

自分に合ったバイオメディカルエンジニアリングのプログラムを見つける方法

私のように、自分のユニークな目標や興味に合った最適なバイオメディカルエンジニアリング(BME)のプログラムを探しているなら、チェン博士からアドバイスがあります。それは、興味のある学校のファカルティ(教員)の研究テーマを調べることです。これをすることにより、その学校の学部の強みを理解し、自分の情熱とマッチしているかを確認できます。またU.S. Newsのようなランキングに頼るだけではなく、自分に合った学校を見つける手助けになります。

インタっビュー後、僕はメディシンと強い関係性を持つ学校や、ファカルティの専門知識や研究フォーカスが多様な学校、またインターンシップの機会がある学校を調べました。ここで僕が考えた、あなたに最適なBMEプログラムを絞り込むためのステップを紹介しましょう。

BMEの学校選びのステップバイステップのガイド:

  1. プログラムの広範な概要を得る: U.S. News & World ReportやQS World University Rankingsなどのランキングサイトを見て、まずは、バイオメディカルエンジニアリングプログラムに特化して調べ始めましょう。
  1. ファカルティの専門知識を確認: チェン博士のアドバイスに従って、興味ある学校のBME学部のウェブサイトを見て、ファカルティのプロフィールと研究分野を確認してみましょう。もしも医療機器やバイオインフォマティクスに興味があるなら、その分野に特化したファカルティがいるか確認してみてください。
  1. 医学部と協力関係があるかを確認: このステップは、医学部に進学したい場合、特におすすめです。ジョンズ・ホプキンス大学やワシントン大学セントルイス校のような医学部を持つ学校には、医療機器の研究や臨床応用研究に対して、より実践的な機会を提供できる環境があります。でも、付属の医学部がないからといって、医学関連の分野への進学がはばまれるとか、そうした分野での研究ができない、ということはありません。ただ強い関係が医学部とあることはプラスという印象です。医学部と太いつながりがあれば、臨床試験や、患者へのケア、実践的な医療機器の応用研究などに直接触れられる機会を学生により多く提供できるでしょう。その意味で、メディシンのキャリアを目指す人にとっては重要な検討ポイントになると思います。
  1. プログラムの規模と柔軟性を考慮する: 例えば、ジョージア工科大学のような大規模プログラムは、そのサイズやリソースの点で、幅広い研究機会を提供できる可能性があります。一方、小規模なプログラムは、より密な指導とユニークな経験を提供するかもしれません。自分の学びのスタイルやキャリアの目標に照らして、環境を考えるのがいいでしょう。
  1. インターンシップの機会を確認する: 一部のBMEプログラムは、学部研究を推奨していますし、また夏のインターンシップの機会を提供することに力を入れています。バイオテクノロジー企業や病院と強いパートナーシップを持つ学校は、実践的な経験を得るのに特に優れているようです。
  1. 卒業後の成果を確認する: 卒業生がどこに進んでいるかも調べましょう。卒業生が、産業界、研究、大学院、医学部など、どの方向にキャリアを進めているかを確認します。例えば、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学は産業界と強い結びつきがあることで知られています。また、医学部への進学の面では、トップ医学部に進む学生をたくさん出している学校はかなりの数がありますが、特にハーバード大学、スタンフォード大学、コロンビア大学などが目立つという印象があります。よく調べてみてください。

これらのステップに従うことで、自分の興味や目標に合ったプログラムを絞り込むことができます!

「ワシントン」という名前のついた学校に要注意!

最後に、学校を調べる際に混乱を避けるための簡単なヒントをお伝えします。「ワシン

トン」という名前がついた大学がアメリカには4校あります。ややこしいですよね?

これを整理すると:

  • ワシントン大学(University of Washington):ワシントン州シアトルにある州立大学。
  • ワシントン大学セントルイス校(Washington University in St. Louis):ミズーリ州セントルイスにある私立大学。
  • ワシントン州立大学(Washington State University):ワシントン州プルマンにある州立大学。
  • ジョージ・ワシントン大学(George Washington University):ワシントンD.C.にある私立大学。

この情報を知っておくことで、自分の目標に合った適切な大学を選ぶ際に役立つでしょう!

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