化学者メリさんとのインタビュー

最初のインタビューは、母の友人でスペインのバルセロナに住んでいるメリさんです。彼女は博士号を持つ化学者で、今は偶然にも日本の会社で働いています。僕はSTEM(科学・技術・工学・数学)の分野に興味がありますが、その中のどの分野に大学でフォーカスすべきかを考えている最中です。なので、どうしてメリさんが化学を選んで博士号まで取得しようと思ったのか、とても興味があります。僕のまわりには化学を専攻した人がいないので、メリさんとお話しして、彼女の体験を直接聞いてみたいと思いました。スペイン語は小学校の頃から勉強していますが、残念ながら僕は会話があまり得意ではないので、このインタビューは英語でやりました(ラッキーなことに、彼女は英語が上手でした!)。ここでは、そのインタビューのハイライトをお届けします。太字が僕の質問です。

こんにちは、メリさん。このインタビューを受けていただいてありがとうございます。

メリ:どういたしまして。楽しみにしていました。

僕は今、大学で何を専攻するべきか考えていて、STEM分野に興味があります。まだどの分野に絞るべきか迷っています。そこで、メリさんがどうして化学者になろうと思ったのか、お聞きしたいです。インタビューを始めてもいいですか?

メリ:どうぞ、何でも質問して。

まず、どうして化学を選んだのですか?化学者になろうと思ったきっかけや、その背後にあるストーリーがあれば教えてください。

メリ:話せば長くなるけど、簡単に言うと、化学を選んだのは経済的な理由が大きいの。実は当時、化学と理学療法のどちらかに進みたいと思っていたんだけれど、理学療法士になるためには私立の学校に通わないといけなくて、親にとっては負担が大きいと思ったの。それで結局、リスクの少ない化学の道を選んだというわけ。今振り返ってみても、あの選択は正解だったと思うわ。

大学生活はどうでしたか?

メリ:正直、化学専攻は大変だったわ。履修しなければならない科目がとても多かったし、特に化学の概念的な部分を理解するのが一番難しかったわね。でも、分析的な側面は楽しくて、そのスキルは今の仕事にも役立っているわ。実際、大学で学んだことが直接仕事に役立っているのは10%にも満たないかもしれないけど、分析力は今も役立っているの。

え、10%ですか!その10%を今どういった仕事に生かされていますか?

メリ:分析の側面の知識はキャリアを通じてずっと役立っているわ。私はバルセロナのアンチ・ドーピング研究所で働きながら博士号を取得して、その後、日本の企業で働くことになったの。これまでのすべての仕事でクロマトグラフィーという技術を使って、血液や尿、さらには香りの成分を分析してきたわ。クロマトグラフィーは化合物を分離するのに使うのだけど、その後、質量分析という手法で化合物を特定して、それぞれの化合物の「シグネチャー(指紋)」を見つけるの。今の仕事では、それらの化合物を組み合わせて、さまざまな製品の香りを作っているわ。

それはすごく面白いですね!香りの好みは国や地域によって違いますか?

メリ:違うわよ。たとえば、日本のシャンプーの香りは、ヨーロッパの人にとってはあまり魅力的に感じられない場合があるの。だから、家庭用品の香りを市場に合わせて調整するのはとても大事な仕事なのよ。

なるほど。家庭用品の香りづくりにも化学の深い知識が必要なんですね。ところで、今、進路に悩んでいる17歳、18歳の若者に向けて何かアドバイスをいただけますか?また化学の道に進んだことに対して、何か後悔はありますか?

メリ:そうね、私のアドバイスは、勉強を最後の最後まで溜め込まないこと。常に少しずつ学んでいくことが大事だということね。そして、今高校で化学を学んでいると思うけど、暗記がすべてじゃないわ。概念を理解することが本当に大事なの。理解力を鍛えられれば、その力は長い目で見ればすごく役立つわ。

素晴らしいアドバイスですね。ありがとうございます!最後に、なぜ大学に進学して博士号を取ろうと思ったのか教えてくださいますか?

メリ:物事は時々偶然に起こるけど、実はその偶然には理由があるのよね。私が大学でインターンシップをしたのは、そもそも学位のため。でもその時、私は運転免許を持っていなくて、バルセロナ市内で会社を探さないといけなかったの。多くの企業は郊外にあるから、とても探すのに苦労したわ。でも運良く、バルセロナにあるアンチ・ドーピング研究所で仕事を見つけたの。もともとは短い期間のインターンのはずだったのが、結局12年も続く仕事になって、その間に博士課程のフェローシップのオファーも受けたわ。途中、健康問題があったり、結婚して母親になったりと色々あったけど、10年かけて博士号を取得したことを自分でも誇りに思っているわ。

メリさん、お話を聞かせてくれてありがとうございます。僕も自分の進路を引き続き探していこうと思います。


インタビューのあと、Zoomだったのでメリさんはスマホを使って彼女の職場を案内してくれました。インタビューは朝早い時間にしたので、オフィスにはメリさんが1番最初でした。彼女の机は2つあって、1 つは研究室、もう 1 つはオフィスにありました😎!研究室は、僕がアメリカの病院で見たラボと似ていました。彼女がインタビューで話していた化合物の分離と特定に使われるガスクロマトグラフィーと質量分析装置も見えました。彼女の机の上には試験管が何本も置かれていて、それらは分析を待っていたようでした。

インタビューでは、メリさんの化学に対するパッションについて聞けると予想していましたが、実際の彼女の話は少し違いました。メリさんが化学を選んだ理由は現実的なものでしたが、彼女の旅は、予期しない道が、結局は本来あるべき場所へと導いてくれる可能性があることを示していたと思います。

Similar Posts