科学を巡る旅 :C.ロナルド・カーン博士との対話
「未知の方向へ進んでこそ、本当の意味で発見的な研究をしていると言えます。そうでなければ、それは『発見』ではありません。」
— C.ロナルド・カーン博士
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今回のインタビューでは、伝説的な糖尿病研究者であり医師科学者でもある C.ロナルド・カーン博士(Dr. C. Ronald Kahn) にお話を伺う機会を得ました。カーン博士はハーバード大学医学部の教授であり、ジョスリン糖尿病センターのチーフ・アカデミック・オフィサーを務められています。糖尿病と肥満の世界的権威として知られる博士は、インスリンシグナル伝達と代謝性疾患の理解において先駆的な貢献をされました。
僕たちは、今回のインタビューは、ホルモンやインスリン受容体についての話が中心になるものと予想していましたが、対話が始まってすぐ、話題はそうした内容を超えて、「好奇心」「覚悟」「発見の喜び」といった、とても深いテーマへと進みました。
🩺 カーン博士の歩み:ケンタッキーからハーバード大学へ
博士が科学に興味をもったのは、とても幼い時で、お兄さんの影響が大きかったそうです。博士号(PhD)取得も考えたそうですが、医療に実際に携わるため、最終的に、医学博士(MD)の道を選びました。博士は、1968年にケンタッキー州のルイビルの大学で医学部を卒業したのち、ミズーリー州のセントルイスにあるワシントン大学でレジデンシーをされています。そして、その後すぐ、NIH(米国国立衛生研究所)の研究室に加わることになり、このことが博士の人生を大きく変える転機となりました。
当初は2~3年の研究予定が、最終的には10年をNIHで過ごし、その後ハーバード大学へと移り、ジョスリン糖尿病センターで40年以上活躍されています。博士は現在、内分泌学分野で最も尊敬されるリーダーの一人です。
カーン博士は、アカデミアの世界に身を置くことで、ご自分の専門分野を超えた研究者たちや、国境を越えた研究者たちとの交流が可能になったと話してくださいました。また、専門外のセミナーに参加することの大切さも強調されていました。
💬「異なる分野の研究に触れると、最高のアイデアが生まれることがあります。『この方法が自分たちの分野に応用できるのではないか?』という閃きが生まれるのです。」
🧪 探究心の力 ― ただし、集中も大事
カーン博士からは、特に僕たちのように進路に迷う10代にとって励みになるアドバイスがありました。それは「最初からすべて決めておく必要はない」ということです。
トーマスが専攻を決めかねていると伝えると、博士はこう励ましてくれました。「まずは興味あることを選び、それに取り組んでみる。そして必要なら後で変えてもいい。重要なのは、『何かに向かって動き始める』ことだよ」と。
💬「何をやりたいか分からないならば、『やりたいかもしれない』ことをまず選べばいい。たとえ、それが一生の決断じゃなくても、少なくとも何かを築き始めることができるからね。」
🧱 困難との向き合い方
カーン博士のキャリアは、今でこそ多くのブレークスルーに満ちていますが、そのプロセスは、予期せぬ出来事や変化の連続でもあったそうです。
博士は、「困難はどんな道にもつきもの」と話し、それには「コントロールできるものも、できないものもあるが、常に『次の最善の一歩』を踏み出すことが大切」と話していていらっしゃっていました。
💬「前向きに自分のベストを尽くすこと、そして、前進するための行動や道筋を見つけること、が大切です。そうしているうちに、きっと望む場所にたどり着けます。」
🔬 臨床と研究の両立
僕たちは、自分たちの父親が医師兼科学者として奮闘している姿を日々目にしているので、医師兼科学者であるカーン博士にも「臨床と研究の両立」について、お話しを伺いました。
博士の答えは明快でした。臨床と研究を両立するキャリアは「両方が好きでないと難しいね」と。
💬「医学と研究を両立するのは、まるで2つのキャリアを同時にこなすようなもの。でもその両方を楽しめるなら、それはとてもやりがいがあることです。なにしろ、生きて呼吸する人間の中で起きている生理学を体感できるんだから。」
博士がされた重要な研究成果のいくつかは、教科書にない症例を持つ患者との出会いから始まったそうです。たとえば、1日に1000単位以上のインスリンを投与していた患者との出会いが、インスリン抵抗性の理解へとつながったと話されていました。
💬「複雑だったり非常に興味深い症例を持つ患者さんのお話を伺うと、医学にはまだ解明されていないことが多いのだと実感します。そうした気づきから、新たな知識が生まれていくのです。」
僕たちは、この博士のこの考え方がとても気に入りました。「本物の人間が、本物の科学を生む」ということですね。
💡 サイエンスで成功する人の共通点
サイエンスの世界で成功するために重要な資質は何でしょうか、と尋ねると、カーン博士は次の3つを挙げられました。
- 知的好奇心
- 努力を惜しまないこと
- 人とのつながりを大切にすること
博士は、「何かがうまく説明できないとき、そこにはまだ解明されていない新たな仕組みが潜んでいる可能性がある」と話されていました。そして「成功は準備された人のところに訪れる」ともおっしゃっていました。
💬「幸運は、『準備された心』にしか微笑まないんです。」
また博士は、友情や共同研究、コミュニティの大切さについても強調されました。サイエンスとは、実験やデータだけでなく、「誰と一緒に働くか」も極めて重要なのだと。
🤖 AIと未来について
僕たちが高校でAIクラブを主催していたこともあり、博士にAIについての見解についても伺いました。
カーン博士は、「AIは強力なツールだけれども、最も重要なのは『人間のもつ洞察力』だ、とおっしゃっていました。そして、AIが大規模かつ複雑なデータの処理に適している一方で、「何を探し、どう活かすか」の点は人間の役割なのではないか、とお話しになっていました。
そして、次世代である僕たちが、これから、AIをどう社会の役に立てていくかを探るべきだと、力強く背中を押してくださいました。
🔍 メンターとレジリエンス
最後にカーン博士が強調したのが「メンターの重要性」でした。
しかも、1人ではなく複数のメンターを持つことが大事である、とおしゃっていました。メンターのそれぞれが、話し方、書き方、不確実性への対処法など、異なる視点を与えてくれるはずだと。そうしたスキルは、分子の仕組みや方程式の解法と同じくらい大切だとおっしゃっていました。
🧠 最後に
世界的に著名な科学者であるカーン博士との対話は、僕たちにとって本当に特別で貴重な経験でした。中でも最も印象に残ったのは、博士がお持ちの深い知識であることばかりでなく、その人となりで、温かさ、寛容さ、そして親身なアドバイスが胸に残りました。
お忙しい中、僕たちにお話しする時間をくださったこと、そして科学の道を歩む上でのアドバイス沢山くださったことに心から感謝しています。 では、読者の皆さん、またお会いしましょう!
トーマス&クレイグ

